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 = 経 済 の な い 世 界 =

第2章  ロ ボ ッ ト の 反 乱 

≪15≫ 人間との結婚 = このところ、マーヤの様子がおかしい。なんだか緊張しており、ときどき考え込んでいるようだ。メンデール教授が別れしなにつぶやいた一言が、どうやら影響しているように思われる。メンデール教授は、こう言ったのだ。

「いま賢人会では、ロボットと人間の結婚について議論しているらしい。人間の同性婚はずっと昔に認められたのだから、いいんじゃないかという声が強いそうだ」

正直言って、ぼくはあまりピンとこなかったが、マーヤにとっては衝撃的な情報だったようだ。しかし、よく考えてみると、こんなに献身的で便利なヨメさんを持ったら、何も言うことがない。よその星のことだからどうでもいいが、この国の男性は人間の女性と結婚しなくなってしまうのではないか。

もっとも、女性ロボットと結婚した男性は夜の営みをどうするのだろう。女性ロボットは自己学習で、あそこまで改造してしまうのだろうか。そんなことを考えながらマーヤの横顔を見ていたら、急に下腹に力が入ってしまった。いけない、いけない。

実は、それどころではないのだ。メンデール教授は帰りがけに、ぼくの質問に答えて地球の話もしてくれた。
「地球の話は、もうちょっと待ってください。冷却化が止まって温度が上昇していることは確かです。でもUFOが送ってきたデータの一部に乱れがあって、いま解析をやり直しています。1週間後にまた来てくれませんか」

とても気になったが、ここは1週間後にまた来るしかない。

――でも、どうやって冷却化を止めることができたんでしょうか。あの凍り付いた地球の温度が上がるなんて、とても信じられないのですが。
「そのことも、こんど説明します。簡単に言えば、地球を覆って太陽光線を遮ってしまったメタンガスを化学的に分解するのです。もう3年も前から、その作業を行ってきました。ダーストン国のそうした技術を、どうか信頼してください」

メンデール教授はきっぱりとこう言って、ぼくたちを送り出したのだった。ぼくが地球を飛び出してすぐに、メタンガス分解の作業は始められたことになる。もし本当に地球の温度が上昇していたら、いまごろ人々はどうしているのだろう。再び昔のような地球に戻るなら、ぼくも早く帰りたい。でも宇宙船がないんだ。それにしても、この国の連中がなぜ地球の温度回復に乗り出したのか。大きな疑問であり、少し気味が悪い。

ぼくはこんなことを考えて、半ば喜び半ば悲しんでいる。一方、マーヤの方は「人間との結婚」問題について、思いを巡らせている。だから、このところマーヤとの会話はめっきり少なくなってしまった。

                          (続きは来週日曜日)


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第2章 ロボットの反乱

≪14≫ 女性ロボット
 = 250年前に起こったロボットによるクーデター未遂事件。この計画がマスコミによってすっぱ抜かれると、世の中は大混乱に陥った。政府は緊急に議会を召集したが、「責任者は誰だ」とか「和解の道を探れ」とか、議論は一向にまとまらない。そうしているうちに、ロボット側は食料や飲料水の生産拠点を占領してしまった。もしワーグネル博士らが敏速に動いて蓄電所を掌握しなかったら・・・。

世論は議会の無能さにあきれ、憲法を改正して議会制民主主義を停止。賢人会による政治体制の確立を強く求めた。その結果、国民投票が実施され、少数の賢人による政治体制に切り替わったのだという。同時にこの国民投票で、男性ロボットを製作しない方針も正式に決まった。つまり、それ以後のロボットはすべて女性になったわけだ。

メンデール教授に聞いてみた。
――いったい、この国にロボットは何体ぐらいいるのですか。
「建国当時は1000万体の男性ロボットを作ることが目標でした。国造りのために、人間並みの労働力や技術力を持ったロボットが必要でしたからね。それがクーデター未遂事件で男性ロボットが排除され、いまは女性ロボットが1000万体います。その約半分がモノの生産工場や流通などの現場で働き、残りの半分は各家庭に配属されています」

――働く女性ロボットと家庭の女性ロボットとは、性能が違うのですか。
「大きくは違いません。ただ働くロボットは勤勉な性格の女性から遺伝子をもらっていますし、家庭用ロボットは世話好きの女性から遺伝子をもらいます。そこにいるマーヤ君は後者の方だから、よく面倒をみてくれると思いますよ」

マーヤは知らんふりをして、忠実に通訳をしてくれる。
――では、もうロボットについて心配なことはなくなったのですね。
「いやあ、それがそうでもない。女性ロボットも人間並みに、あるいはそれ以上に自己学習をしてしまう。長い年月が経つと、人間以上の能力を身に着ける可能性が大きいのです。ゲームや計算などはそれでもいいのですが、科学や技術の面で人間以上の能力を持つとどうなるか。その心配があるので、女性ロボットについても寿命を100年に制限したわけです。

また特に家庭用ロボットは、女性的な感情を高めがちです。つまり家族的な心情が増幅し、たとえば人間の男性に対する恋情を生み出す方向に進化する傾向さえ観察されるのです。一方、人間の若い男性はロボットがよく面倒をみてくれるため、結婚したがらなくなった。いま大きな社会問題になりつつあるのです。ある意味では、女性ロボットの反乱の方が男性ロボットの判りやすい反乱より怖いのかもしれない」

                         (続きは来週日曜日)


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第2章 ロボットの反乱

≪13≫ クーデター = メンデール教授の講義は淡々と続いた。
「ダーストン星には、この島以外に陸地はありません。つまり、バカげた領土争いをするような相手国がないのです。このため私たちの祖先は武器や弾薬をいっさい作らないことに決めました。それでロボット戦争も、工事用の鉄棒を短く切って振り回すだけでした。この様子を見て、当時の人々はロボットがちゃんと働いてくれる限り、放置しておいても大きな危険はないと判断したのです。

ロボット戦争から15年後のダース65年の秋に、一人の若い研究者が書いた報告書が科学院に届きました。ロボットが夜間に使用する電力量が異常に増えているという内容でした。当時の科学院長だったワーグネル博士がこれを重視。秘かに探らせたところ、ロボット同士の夜の通信量が激増していたのです。さらに調べてみると、ロボットのヤクザ集団がますます勢力を拡大し、秘かに人間に対するクーデターを計画していたことが判明しました」

当時の記録によると、あるマスコミがこのことをスクープしたために、世の中は大混乱。政府は議会を召集して対策を講じようとしたが、議論ばかりで何も決まらない。そのうちにロボット側は食料と飲料水の製造工場を占拠、人間を日干しにする作戦に出た。これに対してワーグネル博士は6人の賢人を集めて秘密の委員会を組織。素早く数百人の若者を動員して、北部と南部の2か所にある中央蓄電所だけを管理下に置いた。

そして全国への送電をストップ。この蓄電所はロボット軍団に取り巻かれたが、高い塀に囲まれていたので何とか守り切った。また電気を止められた国民からも苦情が殺到したが、ワーグネル博士らは頑として停電を強行。約3週間の停電で、ロボットはすべてバッテリーが上がって動けなくなった。

メンデール教授は、フーっと息をついて、こう断定した。
「あのとき、もしロボット側に負けていたら、人間はロボットに支配されることになったろうね。なにしろ彼らは人間並みの知能を有している。体力では、人間は敵わない。だから本当に危ないところだったんだ。そして250年前の祖先たちは、この事件を教訓にいくつかの改革を断行したのです」

――そんなことがあったんですか。危ないところだったのですね。
ぼくは地球の冷却化が本当に止まったのかどうかを聞きたかったが、メンデール教授の熱心な説明を妨げることが出来なかった。

「改革の1つは、議会制民主主義を停止し、賢人会による統治制度に改めたこと。もう1つは、男性ロボットを製作せず、すべてのロボットを女性だけにしてしまったことでした」

                      (続きは来週日曜日)
   

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第2章 ロボットの反乱

≪12≫ 関ヶ原の合戦 まるで子どものときテレビで見た関ケ原の合戦のようだった。手に手に棒のようなものを振りかざした無数の戦士たちが、広い草原を埋め尽くし殴り合っている。初めは人間だとばかり思ったが、よく見ると敵も味方もロボットだ。殴り倒されたロボットが、次々と草原に横たわる。音は消してあるが、怒号や悲鳴が聞こえてくるようだ。

5分ほどで壁に映された戦闘場面は消え、室内が明るくなった。ここは40階建てビルの最上階。天井がガラスのように透明な材料で作られているから、とても明るい。広い部屋には、いくつもの机や機械類が置かれている。壁や机の上には、訳の判らない数式が落書きのように。ずっと向こうの端では、何人かの人間とロボットが黙々と作業をしていた。

机をはさんで、科学大学院の学長メンデール教授が微笑んでいる。最初に両手を触れ合って挨拶したときに判ったのは、身長がぼくと同じ170センチぐらい。この国の男性としては小さい方だ。痩せ形で、顔は意外に小さく、なんだかアインシュタインに似ていなくもない。胸のプレートには「45」と書いてあった。

メンデール教授がゆっくりした口調で話し出す。
「賢人会のウラノス議長からは、できるだけ何でも説明するようにと言われています。で、きょうはロボットについて、お話ししましょう。その前に、時系列的なことをはっきりさせたいと思います」

さすがに、この人は科学者なんだと感心していると・・・。
「われわれの祖先が初めてこのダーストンの土を踏んだのは、いまから315年前のこと。そのときをダース元年と定めましたから、ことしはダース315年になります。宇宙船で運べた人は年に10万人程度でしたから、人口はなかなか増えず、新しい国の建設も進みませんでした。

そこで最初に到着した人々は、人間並みの能力を持つロボットの製作に全力を挙げたのです。ロボット技術はチャイコ星の時代に相当進歩していましたから、ダース20年のころには人間と全く同じ運動能力と知力を持つロボットの量産に成功しました。ところが後になって判ったことですが、当時の科学者たちは重大なことを一つ見落としていました。

ロボットの脳を設計する際、優秀な能力を有する人間の若者の脳を選んで細胞と神経回路をコピーしたのです。たとえば判断力、創造力、指導力などで優れた人の脳内構造を精密に移植しました。しかし、これだけ人間に近い能力を持つと、ロボットは自分でその能力を向上させることに気が付かなかったのです。

――要するに、自己学習するわけですね。
「その通り。その進展は非常にゆっくりなのですが、何年か経つとロボットの性格が変化して行くのです。特に支配欲が強くなったロボットが出現し、それが人間の知らないうちに大昔のヤクザのような組織を作り上げていました。そして、そういう組織同士が衝突した。それがさっきの映像です。ダース50年夏のことでした。私たちは、これをロボット戦争と呼んでいます」

                      (続きは来週日曜日)
 

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◇ これまでの あらすじ ◇

1) 地球が寒冷化の危機 = 21世紀の半ば、地球は厚いメタン・ガスに覆われ、冷え込んでしまった。食料不足に見舞われた人類は、移住できる星を探るために、宇宙船を飛ばした。ぼくはその宇宙飛行士の1人。4.2光年離れたダーストン星にたどり着く。

着陸時に事故が起こり、ぼくは重傷を負った。しかし、この国の医療技術は完璧で、1週間のうちに歩けるようになる。どんな病気でもケガでも治してしまうので、この国の人たちは死ななくなってしまった。

2) マーヤという名のロボット = ぼくの世話をするために日本語が判るように改造されたのが、マーヤという名前の女性ロボットだ。ロボットとは言っても、顔や体つき、それに皮膚の艶やかさは人間並み。この国のロボット技術は素晴らしい。

マーヤは左胸に「71」と書かれたプレートを付けている。ロボットだけではなく、人間の胸にもプレートが。病院のブルトン院長は「48」、賢人会議の議長を務めるウラノス博士は「12」だった。そして、ぼくの左胸にも「66」のプレートが。この数字は「100から年齢を引いた数字」だと聞いて驚いた。

3) 全国民の寿命が100歳 = ダーストン星はベートンという名の恒星の周りを回っている惑星だ。住民は300年ほど前に別の星から移住してきた人たちの子孫。移住は大型宇宙船で行われたが、それでも人口の1割ぐらいしか運べなかった。

残った9割の人々は、放射能汚染のために死滅したという。自分たちが犠牲になって、1割の人を新天地へ送り出した。このダーストン国では先祖の崇高な精神を受け継ぎ、人口を抑制するため驚くべき決断に踏み切った。それが死ななくなった国民の寿命を、すべて100歳にするという異常な制度の導入である。

国民はこの制度に満足しており、反対する人はほとんどいない。プレートの数字は、残りの人生を大切に生きるための証しなのだという。

4) 地球の冷却化が止まる = そんなとき、地球の冷却化が止まったというニュースを聞く。詳細はまだ判らない。そして宇宙船が壊れてしまったから、ぼくは地球に帰れない。

                  (第2章は 来週日曜日から)  

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