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第1章  ダー ス ト ン 星 

≪10≫ 天涯孤独 = 実を言うと、ブルトン夫人の「子どもを残して病気や事故で死んでしまう親の悲劇」という言葉は、ぼくの胸にぐさりと突き刺さった。忘れようとしていた25年前の記憶が、一気によみがえったからである。そんな悲劇が起こる世界よりは「100年間を確実に生きられる方がいい」という夫人の主張にも、説得力を感じてしまった。

その夜、ぼくはその日の出来事をノートにメモしながら、物思いに沈んでいた。そう、ぼくが5歳のとき、両親は事故で死んだ。高速道路で大型トラックに追突され、車が前のバスに激突したのだ。ぼくは後部座席にいて軽傷で済んだが、その瞬間から天涯孤独のみなし児に。擁護ホームに引き取られ、そこから学校に通った。

いまは病室から出て、別棟の個室に住んでいる。ベッドと机があるだけで、カベにテレビは映るけれども面白くないのであまり見ない。もっとも個室といっても、マーヤはいつもいる。隣り部屋にいることが多く、ときどき食事や飲み物を運んでくる。でも食事を作るわけではない。食べ物も飲み物も、いつもどこからか運ばれてくるようだ。

「今夜はとても悲しそうな顔をしていますね。なにか、いやなことでも」
傍にきたマーヤがそう言った。こいつロボットのくせに、ぼくの精神状態を読み取れるのか。一瞬そう思ったが、嬉しくもあった。それで25年前の出来事を聞かせてやると・・・。

「まあ、それは大変でしたね。1人で学校に行って、それからどうしたのですか」と聞いてきた。そんなことまで話したくはなかったが、だれかに聞いてもらいたい気が急に湧いてきた。

――大学まで進んだが、友達は出来ない。ぼくの気持ちのどこかに、素直になれないところがあったのだろう。好きな女性も見付けたけれど、想いを打ち明けられずに終わってしまった。これではダメだ。21歳になったとき、そう思って大学を辞めて航空自衛隊に入ったんだ。いろいろ鍛えなおそうと考えてね。

そのころ日本では、月に宇宙基地を建設する計画が進行していた。そこで、ぼくは宇宙飛行士の訓練を志願したが、特訓中に地球の冷却化が大問題になったんだ。光速宇宙船に乗れたのは、ぼくの技量が優秀だったからではない。だれも4.2光年先の未知の星なんかに行きたがらなかったためだよ。そこからの話は、君ももう知っているだろう。そしていま、ぼくはここにいる。全く夢のような話だ。

「そして、私もここにいる」と言い返して、マーヤはちょっと微笑んだ。これにはぼくもびっくり、思わずつられて笑ってしまった。

「笑顔が出たところで、おやすみなさい」と、マーヤは礼儀正しい。

                     (続きは来週日曜日)
     

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