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第3章  経 済 が な い 世 界 

≪25≫ マネー全盛期  = 再び動く歩道に乗って、いちばん奥の部屋に戻る。そこでラフマが天井の一角を指さすと、部屋の雰囲気ががらりと変わった。展示されていたコン棒や弓矢が美しい色の貝殻や石に変わり、壁の大きな絵も古代人がウサギと貝殻を交換する図柄に一変した。

「こんどは通貨の歴史です。貝殻や石などの自然物から、人間が鋳造した金属のコイン。さらに近世に入ると、中央銀行が発行する紙幣が使われるようになります。地球では、どうだったのでしょうね」

ショッピー館長の言葉に、うなずくばかり。そう、中学や高校で習った通りだ。地球の人間もこの国の人たちも、全く同じ道を歩んで進歩してきたんだ。不思議だなあ。

そんなことを考えているうちに、ショッピー館長は急ぎ足で行ってしまう。まるで「この辺の歴史はよくご存じでしょうから」と言っているようだ。この人はぼくの知識を、どのくらい知っているのだろう。頭のなかをすっかり見透かされているようで、ちょっと気持ちが悪い。

「この辺りからは、400年ほど前の展示が始まります。機械経済時代が成熟期に入り、社会や経済や政治までがものすごい勢いで変わり出しました。私たちはここからチャイコ星が放射能で汚染されるまでの約80年間を『滝つぼ前時代』と名付けました。つまり河の流れが滝つぼに近づいて異常に速くなり、最後にはこのダーストン星への脱出となるわけです。
そのころの政治体制は、選挙による議会制民主主義でした。政府は景気を悪くすると、選挙で負けてしまう。ですから財政・金融面からの景気刺激策をとり続け、中央銀行には超金融緩和策を継続するよう要求したのです」

この話も、ぼくが飛び出す前の地球の状況によく似ているなあ。日本でも、ぼくが生まれたころ『異次元緩和』とか『ゼロ金利』なんていう言葉が流行っていたらしい。この国では300年以上も前に、そんな経験をしたんだ。

「景気対策が長いこと続き、財政・金融の両面から大量のおカネが世の中に供給されました。その結果、おカネを中心とする新しい経済領域が誕生したのです。私たちはこれを“マネー経済領域”と名付けました。経済の歴史は3000年以上も前にさかのぼりますが、ずっとモノを作ったり運んだりすることが中心の“古典的経済領域”にとどまっていたのです。
そこにマネー経済領域が加わり、猛烈な勢いで膨張しました。株価や貴金属の値段が高騰し、景気の好調が持続したようにみえました。ところが結局は、これが社会や政治に大変動を惹き起こすことになります」

                              (続きは来週日曜日)


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